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2009年7月14日 (火)

最判平成21年7月14日-債権差押命令と遅延損害金

債権差押命令の申立書には請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って上記命令の申立てをした債権者は,特段の事情のない限り,配当期日までの遅延損害金の額を配当額の計算の基礎となる債権額に加えて計算された金額の配当を受けることができる。

1 本件は,上告人が,上告人及び被上告人を含む7名を債権者,Aを債務者,宝塚市を第三債務者とする大阪地方裁判所堺支部(以下「堺支部」という。)平成19()129号配当等手続事件につき同年328日に作成された配当表(以下「本件配当表」という。)の変更を求める配当異議事件である。

2 …(1)ア Bは,平成16223日,堺支部に対し,Aを債務者,宝塚市を第三債務者とし,請求債権及び差押債権を次のとおりとする債権差押命令を申し立て,同月24日,同命令が発令された。

()請求債権大阪法務局所属公証人C作成の平成14年第777号金銭消費貸借契約の執行力ある公正証書正本に記載された元金,利息及び遅延損害金並びに執行費用合計55108326

()差押債権違法な仮処分命令の申立て等を理由とするAの宝塚市に対する損害賠償債権(以下「本件損害賠償債権」という。)のうち上記請求債権の金額に満つるまでの部分

イ Bは,平成17330日,堺支部に対し,Aを債務者,宝塚市を第三債務者とし,請求債権及び差押債権を次のとおりとする債権差押命令を申し立て,同月31日,同命令が発令された。

()請求債権上記公証人作成の平成16年第1015号債務承認履行契約の執行力ある公正証書正本に記載された元金及び遅延損害金並びに執行費用合計73967393

()差押債権本件損害賠償債権のうち上記請求債権の金額に満つるまでの部分

ウ Bは,平成17513日,堺支部に対し,Aを債務者,宝塚市を第三債務者とし,請求債権及び差押債権を次のとおりとする債権差押命令を申し立て,同月17日,同命令が発令された。

()請求債権上記公証人作成の同年第246号債務承認履行契約の執行力ある公正証書正本に記載された元金及び遅延損害金並びに執行費用合計46309304

()差押債権本件損害賠償債権のうち上記請求債権の金額に満つるまでの部分

エ 上告人は,その後,上記アからウまでのBの差押債権者の地位を承継した。

オ 上告人は,平成171221日,堺支部に対し,Aを債務者,宝塚市を第三債務者とし,請求債権及び差押債権を次のとおりとする債権差押命令を申し立て,同日,同命令が発令された(以下,アからウまで及びオ記載の各債権差押命令の各申立てを「本件各申立て」といい,本件各申立てに基づく各債権差押命令を「本件各差押命令」という。)

()請求債権上記公証人作成の同年第638号債務承認履行契約の執行力ある公正証書正本に記載された元金及び遅延損害金並びに執行費用合計7864120

()差押債権本件損害賠償債権のうち上記請求債権の金額に満つるまでの部分

(2) 上記(1)アからウまで及びオ記載の各公正証書正本(以下「本件各債務名義」という。)は,元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を内容とするものであったが,堺支部では,第三債務者が遅延損害金の額を計算する負担を負うことのないように,債権差押命令の申立書には,請求債権中の遅延損害金につき,申立日までの確定金額を記載させる取扱い(以下「本件取扱い」という。)をしていたことから,本件各申立てにおいても,B及び上告人は,本件取扱いに従って,請求債権中の遅延損害金を本件各申立てのされた日(以下「本件各申立日」という。)までの確定金額とした。

(3) 債権者である上告人及び被上告人を含む7名の間で,本件損害賠償債権に対する差押えの競合が生じ,宝塚市が,民事執行法1562項に基づき,本件損害賠償債権の全額である486938104円を供託したことから,堺支部において配当手続が実施されることになった。

(4) 堺支部は,上記配当手続の配当期日(以下「本件配当期日」という。)を平成19328日と指定し,上告人は,同月23日,堺支部に対し,本件各差押命令につき,いずれも本件配当期日までの遅延損害金の額を記載した各計算書(以下「本件各計算書」という。)を提出した。

(5) 堺支部では,本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が,配当手続において,配当期日までの遅延損害金の額を記載した計算書を提出した場合であっても,申立日の翌日から配当期日までの遅延損害金の額を配当額の計算の基礎となる債権額に加えないで,上記債権者の配当額を計算する運用(以下「本件運用」という。)をしていたことから,堺支部の裁判所書記官は,同月28日,上告人の配当額について,本件各申立日の翌日から本件配当期日までの遅延損害金の額を配当額の計算の基礎となる債権額に加えない本件配当表を作成した。

(6) 上告人は,同日,本件配当表に記載された上告人の債権額及び配当額について不服があるとして,配当異議の申出をし,同年43日,本訴を提起した。

(7) 上告人は,本件各申立てにおいて,本件取扱いに従って,請求債権中の遅延損害金を本件各申立日までの確定金額としていても,本件損害賠償債権に対する差押えの競合が生じ,本件各申立日の翌日から本件配当期日までの遅延損害金の額を加えた本件各計算書を提出したのであるから,上記遅延損害金の額を配当額の計算の基礎となる債権額に加えて計算された金額の配当を受けることができると主張している(以下,この主張を「本件主張」という。)

3 上記事実関係の下において,第1審は,本件主張を採用して,被上告人の配当額を減額し上告人の配当額を増額するように本件配当表を変更することを求める上告人の請求を一部認容したが,被上告人がこれを不服として控訴した。原審は,本件運用が実務上定着している現時点において,本件主張を採用すると,配当期日までの遅延損害金の額を記載した計算書を提出しなかった他の債権者と,これを提出した上告人との間で,不公平が生ずることになるなどとして,本件主張を排斥し,上告人の請求を棄却した

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 金銭債権に対する強制執行は,本来債務者に弁済すれば足りた第三債務者に対して,差押えによって,債務者への弁済を禁じ,差押債権者への弁済又は供託をする等の義務を課すものであるから(民事執行法145条,147条,155条,156条参照),手続上,第三債務者の負担にも配慮がされなければならない。債権差押命令の申立書に記載する請求債権中の遅延損害金を申立日までの確定金額とすることを求める本件取扱いは,法令上の根拠に基づくものではないが,請求債権の金額を確定することによって,第三債務者自らが請求債権中の遅延損害金の金額を計算しなければ,差押債権者の取立てに応ずべき金額が分からないという事態が生ずることのないようにするための配慮として,合理性を有するものというべきである。そして,元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を内容とする債務名義を有する債権者は,本来,請求債権中の遅延損害金を元金の支払済みまでとする債権差押命令の発令を求めることができ,差押えが競合するなどして,配当手続が実施されるに至ったときには,計算書提出の有無を問わず,債務名義の金額に基づいて,配当期日までの遅延損害金の額を配当額の計算の基礎となる債権額に加えて計算された金額の配当(以下「債務名義の金額に基づく配当」という。)を受けることができるのであるから(同法1662項,851項,2),本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者は,第三債務者の負担について上記のような配慮をする限度で,請求債権中の遅延損害金を申立日までの確定金額とすることを受け入れたものと解される。

そうすると,本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者であっても,差押えが競合したために第三債務者が差押債権の全額に相当する金銭を供託し(同法1562),供託金について配当手続が実施される場合(同法16611)には,もはや第三債務者の負担に配慮する必要はないのであるから,通常は,債務名義の金額に基づく配当を求める意思を有していると解するのが相当である。

したがって,本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者については,計算書で請求債権中の遅延損害金を申立日までの確定金額として配当を受けることを求める意思を明らかにしたなどの特段の事情のない限り,配当手続において,債務名義の金額に基づく配当を求める意思を有するものとして取り扱われるべきであり,計算書提出の有無を問わず,債務名義の金額に基づく配当を受けることができるというべきである。

(2) 前記事実関係によれば,B及び上告人は,元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を内容とする本件各債務名義に基づき,本件各申立てをしたが,本件取扱いに従って,その請求債権中の遅延損害金を本件各申立日までの確定金額としていたところ,本件各差押命令の差押債権である本件損害賠償債権に対する差押えの競合が生じ,第三債務者である宝塚市は,民事執行法1562項に基づき,本件損害賠償債権の全額を供託したというのである。そして,更に前記事実関係によれば,上告人は,本件配当期日までの遅延損害金の額を記載した本件各計算書を提出したというのであるから,前記特段の事情のないことが明らかであり,上告人は,本件各債務名義について,債務名義の金額に基づく配当を受けることができる…。

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